救急総合診療部の研究
臨床研究に特化した臨床医のための研究を行っています。特に地域医療において指導医的な医師を要請することを目的としています。大学院生の今までの臨床力を生かして、臨床現場の疑問に答えるために、大学院の豊富な学習環境を大いに利用してください。
Syntopic readingによるデータベースの構築や勉強法を学んで、豊富な知識を構築するのみならず、臨床現場での教育者としての手法を学んでいただきます。将来、地域で働いても自己学習ができる人材の育成を目指します。
研究テーマ
1.ER型救急体制の構築
2.ERにおける医学生、初期研修医、後期(専門)研修医の教育
3.ER診療における医療安全
4.診療所総合医(家庭医)、病院総合医(総合内科医)の養成プログラム
5.緊急被ばく医療体制の構築
6.ERでの臨床研究
地域プライマリケア講座の研究
地域プライマリケア講座では、全国初の市町村単独医学部寄附講座として、高浜町の医療や地域医療システムに関することなど、以下のような研究を展開しています。
○福井県高浜町における地域医療教育の効果
○福井県高浜町における住民有志活動がもたらす医療満足度への効果(Action Research)
地域志向型プライマリ・ケア(Community-Oriented Primary Care: COPC)の考え方に則り、福井県高浜町の地域を設定し、その問題点を①医師不足、特に家庭医療・地域医療に特化した医師の不足、②住民の地域医療への関心・理解不足、の2つの優先的な問題に介入すべく、医学教育や住民啓発の効果を検証しています。
医学教育に関しては、高浜町国民健康保険和田診療所を拠点に、町内関連施設と連携しながら地域の生活やプライマリ・ケアの専門性(ACCCA)などを感じていただけるような研修を展開しています。夏期には「夏だ!海と地域医療体験ツアーin高浜」を開催し、地域医療研修+救護所ボランティアのイベントを開催、例年全国より学生・研修医が高浜町を訪れます。参加者の意識の変化として、地域医療の楽しさ、地域医療のより深い理解、地域医療への関心の増加、地域医療へのモチベーションの増加、の効果を確認しています。
住民啓発に関しては、2009年より住民有志団体「たかはま地域医療サポーターの会」を立ち上げ、住民→住民への理解・協力を、さまざまな方法で“地域医療を守り育てる五か条”(一、関心を持とう、二、かかりつけを持とう、三、からだづくりに取り組もう、四、学生教育に協力しよう、五、感謝の気持ちを伝えよう)を呼びかけられています。活動の開始前と2年後で、町民の有志団体の認知度、医療満足度、医療関係者のモチベーションなどの向上を確認しています。
○特徴的な地域住民の理想とする医療に関する探索的研究
理想の医療とは何でしょう?寿命が長い、医療費が安い、などの客観的指標で本質的に測れているのでしょうか?また、全国各地でさまざまな地域の事情がある中、共通の理想がそこにはあるのでしょうか?また、「理想」と決めるのは医療関係者や行政・疫学担当者、患者でいいのでしょうか?
そんな疑問から出発した本探索的研究では、全国の特徴的な地域(都心、地方都市、山村・漁村、離島)の主役である住民が、普段の生活の中で医療をどのように感じ、どのような理想をえがいているか、半構造化グループインタビューを用いて質的に解析し、本質的な理解の足掛かりを研究しています。都心ほど医療の内容に重心が置かれ、離島ほど生活に結びついた医療を意識していることがわかっています。
○在宅療養中患者における口腔ケアの発熱予防効果
高齢者が地域で長く過ごすために支障となる誤嚥性肺炎。Nursing Homeなどの入所施設では、口腔衛生の保持が発熱や肺炎を防ぐというエビデンスがありますが、在宅療養中患者においてもその効果が適応されるのか、町内で療養中の方に口腔衛生指導および器具の譲与を行い、その効果を検証しています。